THE インタビュー

第四回 『これからの通所サービスに求められるリハビリとは』

第四回のTHE インタビューは、

広島市安佐北区の医療法人社団 恵正会 デイケアセンターなごみ管理者 兼 

恵正会 リハビリ部門 部門長 の熊田 健司氏です。

同氏は、急性期病院、リハビリテーション病院を経て、地域に根ざした医療を推進中であった

にのみやグループに入職。現在、主に生活期を支えるデイケアでのリハビリを軸に、

病棟リハビリや訪問リハビリ業務、法人内のデイサービスへのリハビリスタッフの派遣などの

マネジメントをする傍ら、自身、大学の非常勤講師の経験地域住民への運動指導・大学生の臨床実習指導など

精力的に活動している。またグループ内部でも、初期からのグループ研修委員会のメンバーとして

グループ独自の研修制度の設立に貢献、現在OJTを推進するための各種研修プログラムを作成し、

職員の育成にも力を注いでいる。現場にこだわり続け、積極的に多方面で活動している同氏に、

今回、通所サービスに求められるリハビリについての想いを取材しました。

Q1.これからの通所リハビリに求められるリハビリとは?

平成23年7月11日付けで、理学療法士養成校は総数247校(現在募集校238校、定員13175名)です。

  その内訳は、

①    4年制大学(86校) 昼間(4182名) 3年制短期大学(5校) 昼間(290名)

②    4年制専門学校(77校)  昼間(3498名)  夜間(750名) 

③ 3年制専門学校(79校) 昼間(3530名) 夜間(925名)

             で現在のところ、理学療法士教育は①②③で1/3ずつの割合となっています。

 また、国家試験の合格率は(2011年3月31日発表)、

◎理学療法士           ◎作業療法士           ◎言語聴覚士                     

受験者数:10,416名       受験者数:5,794名       受験者数: 2,374名
合格者数:7,736名        合格者数:4,116名       合格者数:1,645名
合格率:74%            合格率:71%           合格率:69.3%

で、理学療法士で言えば年間約8,000名もの新人理学療法士が誕生していることになります。

活動する場所(研究・教育分野除く)も、

■介護保険サービス
 通所リハビリテーション/訪問リハビリテーション/住宅改修・福祉用具のアドバイスなど

■医療サービス
 病院/診療所

■保健サービス
 機能訓練事業/介護予防

■行政サービス
 市・区役所/養護学校

■福祉サービス

と、活動分野も介護保険制度が施行されてから拡大傾向にあり、日本理学療法士協会の平成21年度求人調査報告書によると、

病院などの医療機関の求人箇所比が10%ほど低下し、逆に介護保険領域の求人数が増加するという特徴が示されました。

こうしたことからも分かるように、近年は通所リハビリの需要も増えてきているのが、

我々を取り巻く最近の情勢ではないかと思われます。

私が理学療法士として現場に出た当時は、医療機関特に病院への就職希望が圧倒的に多かったのですが、

リハビリ養成校卒業後すぐに当事業所に入職してきたスタッフもいるのが実際です。

皆さんご承知のように、通所リハビリなどへのリハビリスタッフの需要が増えた背景には、

介護保険制度が施行された頃から国の在宅志向もあり、急性期病院における在院日数の短縮で急性期を脱した後に

退院を迫られた時の行き先が、大きく分けて直接自宅に帰られるかもしくは、より専門的かつ集中的なリハビリをするための

回復期リハビリ病棟を有した病院への転院かの選択枝となったということです。回復期リハビリを経由した後も大半は、

在宅での生活をされていく中で第2の人生を構築していくわけです。そういった方々へスムーズな在宅生活を送る支援を

させていただくところに通所リハビリの存在意義があると思われます。もちろん特に医療機関での入院を経由されない

要介護認定者もいらっしゃいますが、ICFに立った自立支援の理念と技法が必要なのは変わりません。

そこで個人的に思うのは、要介護状態になっていく過程で誰しも個人差こそあれ急性期⇒回復期⇒生活期とあるとすれば

、医療(的な視点)から介護(的な視点)に切り替わる時期があり、つまり患者様(利用者様)のそういった流れを把握し、

いかに不安なくスムーズにサービスを提供できるかが問われ、

そのための働きかけが出来るかどうかが重要ではないかと思います。

医療機関では当然、患者様・家族様を中心として医師の強いリーダーシップのもとでチーム医療が推進されます。

またその流れの中で、患者様へのリハビリを提供させていただくにあたり、エビデンス(根拠)が求められます。

そのため通所リハビリスタッフ(に限らないですが・・・)にも同様に医療的な知識・技術は必要ですので、

積極的に医療系の勉強会にも足を運ぶ必要があると思います。また、通所利用者の重度・高齢化に伴ない、

高齢者の特性をよく理解することも重要ですし、事業所の置かれている地域性をよく理解することも重要だと思います。

何より自分たちよりはるかに人生経験のある方々と関わっていくわけですから、私自身人間性の幅を持たせる意味でも

いろんな分野への探究心は持っていきたいと思います。まわりくどい話になりましたが、

こうして通所リハビリに求められるリハビリの役割とは、利用者様・家族様・関係スタッフ・地域などによって

微妙にいろいろ求めるものは違うかも知れませんが、以上の様なことを踏まえながら、患者様、高齢者そして障害者の

「尊厳ある自立」を達成するためにも、生活者の視点を見失うことなく、急性期⇔回復期⇔生活期の双方向の流れを、

スムーズに行うような働きかけをしていくことなのではないかと今のところ思っています。

Q2.この4月にNWMリハ部会を立ち上げられましたが、その意気込みを教えて下さい。

Q1でもお答えしましたが、デイケア(通所リハビリ)に限らず、現在デイサービスで働くリハビリ職種も増えてきています。

そういう意味でも、リハビリ職種が何が出来て、何を得意分野にしているかを関係職種の方々に知ってもらう時期にある、

という思いで周囲にも促されたのもあり立ち上げに参加しました。

今後は、自分たち(リハビリ職種)を良い意味で「売り込む」ために、自分で「ここは自分(たち)の領域である」と

誇れるものを持ち、外部へどんどんアピールしていくことが必要だと思います。

その一つとして、現在リハビリ部会として体操DVDを考案中です。乞うご期待下さい。

 ↑ 恵正会の通所事業所のスタッフ達と創った、オリジナル体操DVD

Q3.リハビリ職種からみたNWMの活動とは?

昭和40年に施行された理学療法士・作業療法士法も約45年が経ちました。

この法律の制定、その後の運用も、リハビリテーションに関心のある医師や行政職の方々のご尽力によって

推進されたというのが歴史的事実と考えています。そうした中で、理学療法士全体に依存的・理由のない

楽観主義が染み込んでいき、サラリーマン集団という受身の体質になったと言われています。

努力しなくても重宝がられていた時代は終わり、努力なくしては誰も認めない時代になり、そういった意味で、

私的勉強会として立ち上がったNWMのこれまでの努力は今後も継続して更に発展していってほしいですし、

アグレッシブな展開をするであろうNWMの動向は目が離せないですね。

今後も職域を越えてどんどんその輪を拡げていってほしいと思います。

今は介護業界は困難な時期ではありますが、いくら困難な道であっても努力を放棄した瞬間にわれわれの

存在意義はなくなるという危難感を持って、互いに誇りある専門職を目指して切磋琢磨してまいりましょう。

          ↑ リハビリ部会による勉強会の模様

Q4.多職種協働をしていく上で注意している点は?

「情報の共有化⇒情報の積み重ね」と「言語の統一」がキーワードになってくると思います。

まず多職種協働を本当の意味で意味あるものにしていく為には、同じ目標を持つこと(ベクトルあわせ)が必要ではないでしょうか

そして多職種それぞれがそれぞれを理解し敬う気持ちを持つことが大切なんだと思います。

しかし残念ながらそれだけでは不十分で、チーム力が上がるのにも限界があります。大切なことは、チームを構成する関連する

すべての人の意識を引き上げることにも注意しないといけません。

話は若干それますが、医療でももちろん多職種協働(チーム医療)が早くから言われていますが、医療でいうチーム医療が

発生した背景には医療行為の分業化にあると思われます。医療は患者の生命と健康を守るためにあるのならば、

この分業化されたそれぞれの医療行為はその一人の患者のために「統合」されなければなりません。

統合なきチームは治療方針がばらつき、散漫な治療に終わってしまいます。そこに医師の重大な責務があり、

その責務を全うしてこそチーム医療が意味あるものになると思うのです。

 ↑  セラピストが中心になり

           技術講習をおこなっている模様。

チーム力を上げていく上で、当然さまざまな人とコミュニケーションをとっていく必要があるのですが、

スタッフとは「気軽な関係」があるにこしたことはありませんので、自分から困り事がないか「拾っていく」姿勢をとるようには

していきたいと思っています。また積極的にスタッフとコミュニケーションをとっていくために、挨拶はもちろん日頃から何気ない

会話を続けていくよう心がけています。そうした些細な会話からも情報の共有化にもつながることもあり、

それらを積み重ねていくことが実は、利用者様への高い水準のケアが担保されるものだと考えます。

また「言語の統一」に関してですが、リハビリの用語は専門用語が多く、リハビリ職種が知っている用語は、

みんなが知っているという誤った考えを改め、「分かりやすい言葉は何か・端的な言葉に直すと何か」を常に心がけ、

説明する力を身につける必要があると思われます。

利用者様・家族様に説明する時もそうです。「専門職の目線」とともに「素人の目線」も忘れないようにしていきたいですね。

医療法人社団 恵正会 オフィシャルサイト     http://www.keiseikai-nmn.net/ 

 

 

デイケアの管理者 兼 リハビリ部門長 という立場から色々なQuestionに答えて戴きました。

同氏の言葉からは、ご利用者への強い思い、「尊厳ある自立」を達成するために

更なるスキルアップを目指す志の高さを感じた。

チーム力という言葉があったように、これからの通所サービスでは今以上に

専門職(医師・看護師・リハビリ・薬剤師・介護など)との関わり・つながりの強化が必要であり、

NWMを介しての、他事業所との情報交換や交流も今後の介護業界には、

必要不可欠であることを改めて感じさせられた。

  

最後に・・・

同氏にはNWMのリハビリ部会の立ち上げから運営に至るまで、

多大なるご協力を頂いている。

これからも、私達にとって大きな存在になる事は間違いない。