“穴を掘って埋め戻してもいい”。景気のために政府が事業にお金を使う効用をケインズは例えた。しかし実際に、その仕事を毎日させられたら……▼賃金がはずんでも、とても耐えられまい。ドストエフスキーは『死の家の記録』の中で、たとえ監獄の労働でも、意味のある仕事なら耐えられる。夢中にさえなる。逆に、人間を台なしにするには、土の山を別の場所に運んで、また元の山に戻すような、無意味な仕事をさせればよいと書いた▼では、人は働く「意味」をどこに見いだすのか。公立図書館における県民一人当たりの貸出冊数が、7年連続日本一を記録した滋賀県の取り組みを、本紙で紹介した(昨年10月)。成功の秘訣は、司書が「本」だけでなく「人」と触れ合う現場に出ること。県立図書館から市町の図書館へ直接、本を届けに行く。フロアに出て声をかけ、利用者の要望を聞き出した▼県立図書館の岸本岳文館長は語る。「“現場”で汗をかけば、感謝の声をかけられる。自分の仕事の位置づけが分かる。そこからやりがいが生まれるのではないでしょうか」▼「生きがい」も同じだろう。人と触れ合い、語り合い、関わり合うなかに、幸福の手応えはある。「人に会う」挑戦こそ、最高の価値創造である。
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