「東日本大震災から1年。日本は復興の真っ最中です」。甲子園の青空に、
未来を開く力強い声が響いた。21日の選抜高校野球大会の開幕式。宮城・
石巻工の阿部翔人主将の選手宣誓に感動した▼「被災をされた方々の中に
は、苦しくて心の整理がつかず、今も当時のことや亡くなられた方を忘れられ
ず、悲しみに暮れている方がたくさんいます。人は誰でも、答えのない悲しみ
を受け入れることは苦しくてつらいことです」。打ちひしがれた人々の心に寄り
添う温かい言葉だった▼野球部員も多くが被災した。阿部主将の自宅も浸水
し、友も失った。「しかし、日本が一つになり、その苦難を乗り越えることがで
きれば、その先に必ず大きな幸せが待っていると信じています。だからこそ日
本中に届けます。感動、勇気、そして笑顔を。見せましょう、日本の底力、絆を」。
よどみなく、一言一言かみしめるように語り、全力プレーを誓って締めくくった
▼若き命の無限の可能性が輝く舞台が甲子園だ。それは苦しんだ分だけ喜び
があり、努力は決して嘘をつかないことを教えてくれる。89年前の関東大震災や
第2次大戦の後も、センバツは皆の希望となってきた▼今また、心に太陽を持つ
素晴らしい高校生に喝采を送りたい