営業職で活躍する友が、若い頃を振り返っていた。契約を取ろうと奔走しても
うまくいかず、落ち込んだ時は、決まって高いビルに上った。街を見渡し、「これ
ほどの人々が暮らしている。まだまだ開拓できる!」と自身に言い聞かせた、と
▼その彼だったら、どれほど奮い立つだろう。高さ世界一の自立式電波塔「東京
スカイツリー」が、きょう営業を開始する▼22日は、「日本の植物学の父」牧野富
太郎博士の生誕150周年でもある(旧暦では4月24日生まれ)。採集標本50万
点、新種の命名1000という業績に不釣り合いな冷遇の人生だった。小学校中退
という学歴のためか、正当な待遇を得られず、理学博士となったのは65歳。しかし、
「草木の精かも知れんと自分で自分を疑います」と言うほどの情熱で研究に命を
捧げ、後世の人々が仰ぎ見る人生を生き抜いた▼別の壮年と語らう機会があった。
鉄塔にアンテナを設置する際の土台となる「原寸図」を製作している。東京タワーも、
東京スカイツリーの原寸図も、彼が携わった▼彼の人生を支えるのは、
「最高峰の技術者になります!」との師への誓い。何事も高く伸びるためには強固
な基盤が必要だ。揺るがぬ信念と情熱の土台が、気高い人生を築いていく。
新聞のコラムより抜粋。